
セールに合わせて10%引きにする。売れる数は増えそうでも、その分だけ利益が残るとは限りません。値引き分を、販売数の増加で取り戻せるでしょうか。売上の予想だけでなく、減る金額から逆算してみる必要があります。
何%引きにするかを決める前に、値引き後にいくら残るかと、何個売れば必要な金額に届くかを並べてみます。この記事は実績紹介ではなく、説明用の仮例を使った採算確認の手順です。
割引率より先に、値引き後の費用をそろえる
用意するのは、商品の原価、配送・梱包の費用、販売・決済手数料、広告費です。クーポン、店舗が負担するポイント、イベント参加費などがあれば、値引きと別の負担も書き出します。
同じ費用を二度引かないことにも気をつけます。クーポンを引いた後の商品代金から計算を始めるなら、そのクーポン額をもう一度費用に入れません。ポイントの負担先や手数料の計算対象は、利用中の販売先の規約と明細で確かめます。
次の表は、税抜の商品代金3,000円の商品を10%引きにする仮例です。手数料は説明のため商品代金の10%と仮定し、広告費は販売1個に配分した300円で変わらないものとします。特定のモールの料金表ではありません。実際には送料や手数料の課税区分も確認し、売上と費用の税の扱いをそろえてください。
| 確認するもの | 値引き前 | 10%引き |
|---|---|---|
| 値引き後の商品代金 | 3,000 | 2,700 |
| 原価・配送・梱包 | −1,500 | −1,500 |
| 販売・決済手数料 (仮に10%) | −300 | −270 |
| 1個に配分した広告費 | −300 | −300 |
| 上記を引いた残額 | 900 | 630 |
家賃・人件費などの固定費、返品・追加販促費などは含めていません。ここでいう残額は、会社の最終利益や会計上の売上総利益ではありません。
値引き額は300円でも、手数料が30円減るため、残額の減少は270円です。反対に、値引きしても減らない費用はそのまま残ります。すべての費用を売価と同じ割合で減らす計算にすると、採算をよく見積もりすぎます。
10%引きでも、必要な販売数は10%増では済まない
値引き前に100個売っていたなら、残額の合計は900円×100個で90,000円です。値引き後に同じ90,000円を残すには、90,000円÷630円、端数を切り上げて143個が必要になります。
110個では、残額の合計は69,300円です。販売数が10%増えても、元の90,000円には届きません。「セール中に少し多く売れた」だけでは、値引き前よりよかったとは判断できないわけです。
目標の残額合計 ÷ 値引き後の1個あたり残額
必要個数は端数を切り上げる。残額が0円以下なら、この式で個数を増やしても目標には届きません。
この計算は、同じ商品を売り、1個あたりの費用が仮定どおりである場合に使えます。送料が注文単位なら注文数や同梱数を、広告費が増えるなら増額分を別に見積もってください。
143個や188個は「売れる数」ではなく「必要な数」です。同じ長さの期間の販売数、過去のセール、現在の在庫や出荷能力と比べて、無理のある計画になっていないかを見ます。過去と季節や広告条件が違えば、その差も残します。
売り切るための値引きと、利益を増やす値引きは分ける
古い在庫を減らしたい、期限までに売り切りたい。そういう値引きなら、直近の残額合計が減っても選ぶ理由はあります。ただし、その理由を「利益が増えるから」に置き換えないようにします。
売り切りが目的なら、対象の在庫数、期限、保管を続ける費用、値下げ以外の対応にかかる費用を並べます。すでに仕入れた原価は帳簿上の採算には残りますが、これから値下げして売るか保管するかという比較では、今後どの入金・支出が変わるかも分けて考えます。新しく仕入れる商品を、同じ条件で値下げし続けてよいという意味ではありません。
新規のお客様を増やす目的でも、将来のリピート購入を確約した利益として足さないこと。まず今回いくら負担するかを決め、その後の購入が確認できてから評価を足します。売上、在庫、継続購入のどれを確かめたいセールなのかを、一つに絞っておくと判断がぶれにくくなります。
開始前に上限を決め、終わったら総額で確認する
価格を登録する前に、商品、期間、割引後の価格、費用の前提、必要個数、使ってよい追加費用を1枚に書きます。何個売れれば継続するのか、いつまでに見直すのかも担当者間でそろえます。
「通常価格から○%引き」と表示する場合には、その比較に使う価格の根拠も別に確認します。採算が合うことと、価格表示が適切であることは別です。過去の価格を使う表示については、消費者庁の二重価格表示の説明と、販売先の現行ルールを確認してください。
終了後は、値引きとクーポンを反映した商品代金、実際の販売数、手数料、広告費、返品・キャンセル、追加作業の費用を集めます。期間が同じでも集計途中の返金があれば、その時点の暫定値だと分かるようにします。管理画面の「利益」に何が含まれているかも確認し、未入力の原価や含まれていない費用を補います。
比べるのは売上の増加率だけでなく、残額の合計と、始める前に決めた目的です。セール前の購入が期間中に移っただけかもしれないので、前後の期間も見ます。比較対象がなければ、値引きの効果だけを切り出して証明できたとは言えません。
次のセールでは、全商品を同じ率で下げる前に、一つの商品でこの表を埋めてみる。必要な販売数に無理があるなら、値引き率を浅くする、対象商品を変える、実施を見送る、という選択肢が残ります。